当社:ちなみにですね、全社員を対象にしたアンケートをするのは良いのですが、それだと正しく実態を把握できない危険があるんですよ〜。
Aさん:ほうほう、なんで?
当社:アンケートには欠陥があって、商品開発や事実を聞くアンケートは良いのですが、特に組織診断のような個人の主観が多い場合は正しく判断できないのです。
Aさん:ほうほう、というと?
当社:よくパワハラ・セクハラの話ってありますよね?
パワハラ・セクハラってやってる本人は「良かれと思って」、「彼に気づいてもらいたいから」、「単なる冗談」、「コミュニケーションの一種」と思っていて、まさか相手がパワハラ・セクハラだと感じているなんて青天の霹靂なのです。
そんな人は「あなたは部下と良い関係が作れていますか?」という問いに対して「もちろん、YES!」となるのです。
また、僕の経験でもあるのですが、敢えて嘘をつくならまだしも、人は意外と真反対の回答をしてしまうことがあるのです。
例えば、部下思いで他部署の部下のトラブルまで心配したり育成するために色々なことをして常に部下の育成を心がけている自己謙遜が強い部長Aさんがいます。一方、部下から慕われておらず、部下の手柄は自分の手柄、自分の失敗は部下のせい、部下の失敗は俺に恥をかかせたとなるような自信過剰な部長Bさんがいます。
そんな部長達に「部下を育成するために様々なアプローチをしていますか?」という問いに対して、自己謙遜のAさんは「僕なんてまだまだ未熟」だと思って、「それほどやっていない」と回答します。
自信過剰のBさんは「もちろん!普通の人以上に俺はやっている」と思って「とってもやっている」と回答します。
この回答でAさんBさんを正しく評価できるでしょうか?
Aさん:できないだろうな・・・
当社:そうです。正しく評価できなくなってしまいます。
でも、厄介なのは、AさんBさんは共に嘘をついていないことなのです。
共に「自分はそう思った」のですから・・・。
Aさん:うーん・・・
当社:これは認知バイアスと呼ばれるもので、事実は一つでも、それを解釈する人によって真実は異なってしまうのです。
認知バイアスがあるとどんなに気をつけていても事実を事実として回答することは難しいのです。しかも、アンケートをするタイミングによって何かの事象がより鮮明になったり、過去の重要なトピックスが薄れてしまうこともあります。
ですので、人材組織の課題発掘や、僕はこう思う、私はこう思うということを回答するアンケートで行う定量調査では本当の実態を明らかにすることは難しいのです。